ショートショート(完結物の小説)
もしゃ、もしゃ、もしゃ…。
もしゃ、もしゃ、もしゃ…。
静かな園内で、カメが、野菜を、咀嚼する音だけが響く。ここは、動物園。このカメは、カメの中でも、一番大きい…ゾウガメと呼ばれていた。月の始めに、必ず会いに来てくれる女の子がいた。名前は、わからないが、カメは、女の子のことを、好いていた。最初は、見た目がすきだったが、手をのばして、カメの甲羅を撫でてくれた。その手が思ったより、心地よく、カメは、女の子が好きになった。でも、女の子は、やって来ても、撫でてくれる時と、そうじゃない時があった。
それは、カメが手の届かない位置にいるから、しかたがないのだが、カメには、そんなのわからなかった。ただ、女の子は、カメのことを、『カメちゃん!』と呼んでいた。カメは、この動物園を、去って違う動物園に、行くことになった。。。そして、その日は、女の子が会いに来る日だった。動物は、痛みを感じたら、涙を流すことはあっても、感情で涙を流すことはない。
でも、ゾウガメは、泣いていた。
ゾウガメ自体も、泣いたのは初めての経験だった。【鳴く】のでは、【泣く】
女の子は、ゾウガメが去った後、売店で、カメのストラップを買った。
END